大阪市阿倍野区の内科、小児科、泌尿器科、腎臓内科、石原医院

石原医院

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泌尿器科の病気

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前立腺肥大症という病気について

前立腺は、膀胱の前に立つ腺と書き、男性の膀胱の出口にあり尿道を取り巻いている腺組織です。正常の前立腺はクルミ大の大きさで、20g程度です。前立腺は、尿道を取り巻く内側の腺組織(内腺)と、内腺を取り囲む腺組織(外腺)からなり、精液の一部(前立腺液)を作っています。
過半数の男性では、年齢と共に前立腺の内腺が肥大してきます。前立腺が肥大すると尿道を圧迫して排尿障害を引き起こします。前立腺肥大症で排尿障害が起こる機序として、肥大した前立腺によりその中を通っている尿道が圧迫される機序(機械的閉塞)と、前立腺の肥大に伴って交感神経の緊張が高まって前立腺内の平滑筋が収縮して尿道を圧迫してくる機序(機能性閉塞)があります。
前立腺肥大症の主な症状は尿が出にくくなること(排出障害)です。排尿時の尿の勢いが低下し、尿が途中で途切れたり尿線が分かれて便器の周囲を汚してしまったり、また、尿がまったく出なくなること(尿閉)もあります。一見正反対の症状に思えますが、昼間トイレに何度も行くようになったり、夜間トイレに起きるようになったり、尿意を催すと我慢が効かず漏れそうになったり、時には漏れてしまうような症状(蓄尿障害)が出ることもあります。
前立腺肥大症が進行して残尿が増加すると、腎臓で作られた尿が膀胱に流れにくくなり尿管内で尿が停滞して水腎症になり、腎機能が低下して尿毒症になったり、残尿が多いために尿路感染症、膀胱結石などを引き起こしてくることがあります。

前立腺肥大症の診断

前立腺の肥大に伴って、尿道の圧迫の程度が強くなり尿が出にくくなるとは限りません。また、尿が出にくいからといって必ずしも前立腺が肥大していたり、尿道の圧迫の程度が強いとは限りません。
したがって、前立腺肥大症を診断するためには、前立腺肥大症に伴う症状、肥大の程度、排尿障害の程度を検査することになります。
前立腺肥大症の症状は、問診や国際前立腺症状スコア(IPSS質問表)、過活動膀胱症状スコア(OABSS質問表)などを用いて行います。肥大の程度は、直腸診や前立腺のエコー検査にて行います。そして、尿の出にくさの程度は、残尿測定や尿流量検査にて行います。尿道の圧迫の程度を見るために内視鏡検査や尿流動態検査を行うこともあります。そして、これらの検査を組み合わせて診断し、治療方針を決定していきます。同時に、エコーを用いて水腎症の有無の確認を行ったり、血液検査にて腎機能の評価や前立腺癌マーカー(PSA)検査も行います。

前立腺肥大症の治療法

治療には、薬による治療と、手術による治療があります。
先ほど説明した交感神経の緊張による機械的閉塞に対しては、交感神経のα1作用をブロックして平滑筋の緊張を緩めるお薬であるユリーフ、ハルナール、フリバス等や、最近発売されたホスホジエステラーゼ5阻害作用により血管平滑筋弛緩による血流改善作用、尿道・前立腺・膀胱頸部の平滑筋弛緩作用を有するザルティアという薬があります。どちらの薬剤も即効性はありますが、前立腺の肥大を縮小させる作用がないため、長期間服用していると作用が弱まってくることがあります。
α1ブロッカーは、立ちくらみ、射精時の精液量の減少、口渇、鼻閉、眠気などの副作用があります。白内障の手術の際には、術中虹彩緊張低下症候群(水流による虹彩のうねり、虹彩の脱出・嵌頓、進行性の縮瞳)が起こり手術が困難となることもありますので、事前に眼科の医師に服用していることを知らせておくことが必要です。
ザルティア服用時の注意点としては、狭心症の時などに用いられる硝酸剤と併用すると急激な血圧低下を来すことがあり硝酸剤との併用は禁忌です。
前立腺肥大症の機械的閉塞には、肥大した前立腺を直接縮小させる作用のある抗男性ホルモン剤のアボルブがあります。ただし、アボルブで前立腺が縮小するまでには3カ月程度かかり即効性がなく中止すると元に戻ってしまいます。将来前立腺の肥大が著しくなり手術を必要とする状態を回避するのに有効です。なお、アボルブ服用中はPSA値が約半分にまで低下するため、前立腺癌を見落とさないように注意が必要です。
外科的治療としては、従来よりTURp手術が一般的です。尿道口より内視鏡を挿入して前立腺の肥大した内腺を尿道側から削りとり、尿道を広げる治療です。下半身麻酔が必要で、通常入院で治療を行います。最近では、HoLEPと呼ばれる方法も一部の施設で行われています。この治療は、レーザー照射による止血・切開方法を用いて肥大した内腺をミカンの皮を剝くように、くり抜くようにして手術を行う方法で、出血が少なく、内腺を摘除できる利点があります。

日常の注意点

1.総合感冒薬、胃薬、アレルギー薬、気管支拡張薬、頻尿治療薬、抗うつ剤、抗パーキンソン病薬などのなかに尿が出にくくなる副作用のあるお薬がありますので、前立腺肥大症があることを処方医に知らせてください。
2.アルコールやコーヒーを飲み過ぎないように注意してください。
3.尿を我慢し過ぎると尿が出なくなってしまうことがありますので、我慢し過ぎないようにしてください。
4.便秘をすると尿が出にくくなりますので、排便の調節を心がけてください。
5.長時間の坐位や下半身の冷えは避けてください。

慢性前立腺炎について

慢性前立腺炎は、男性の下腹部、足の付け根、鼠径部、股の間(会陰部)、陰嚢部、腰部にさまざまな鈍い痛みや不快感、排尿時の違和感、残尿感、頻尿などさまざまな症状を起こし、その原因が前立腺の炎症にあるとみられる病気です。急性前立腺炎と異なり発熱はみられません。
症状としては、排尿時や射精時の痛みや不快感、陰嚢と肛門の間(会陰部)、足の付け根(鼠径部)、大腿内側、陰嚢部、腰部などいろんな場所の痛みや不快感、尿が近い(頻尿)、尿が漏れそうになる(尿意切迫感)、尿が出にくい感じ(排尿困難感)、残尿感、性欲の低下、早漏、不妊症などがみられます。
前立腺肥大症、細菌性膀胱炎、間質性膀胱炎、過活動膀胱、膀胱・尿道結石、椎間板ヘルニアなどの脊椎疾患、痔疾、前立腺癌、精神的原因でも同様の症状のみられることが有り、これらの疾患との鑑別が必要になります。
診断には、検尿、直腸診、前立腺マッサージ後尿の検査を行います。直腸診では肛門より指を入れて前立腺を圧迫すると炎症のある前立腺部に痛み(圧痛)や腫れがあり、前立腺表面がでこぼこしている(不整)こともあります。その後前立腺のマッサージ(圧迫)を行って前立腺腺管内の分泌物を尿道に押し出して、その分泌物中に白血球や細菌が出ていないかを調べます。
診断は、前立腺分泌物中の白血球や細菌の有無により以下の3群に分類します。

  直腸診で圧痛 白血球数
増加
細菌
慢性細菌性前立腺炎 あり あり あり
炎症性 慢性骨盤内疼痛症候群 あり あり なし
非炎症性 慢性骨盤内疼痛症候群 あり なし なし

治療としては

慢性細菌性前立腺炎の場合は、細菌の抗菌剤感受性を考慮しながら、前立腺腺管内への移行の良いニューキノロン系薬抗菌剤を中心に2~4週間の長期間投与します。セフェム系やペニシリン系抗生剤は腺管内への抗生剤の移行が悪く用いません。当院では、腺管内の閉塞の解除や腺管内の細菌、膿の排出を促すために前立腺マッサージも同時に行っています。
炎症性慢性骨盤内疼痛症候群では、細菌は検出されませんが膿尿がみられることより細菌が原因のことが多く、まずはニューキノロン系薬抗菌剤を中心に2~4週間の長期間投与し症状の改善がみられるかみます。慢性前立腺炎と同様に排膿作用も考えて前立腺マッサージを施行したり、セルニルトン錠などの前立腺組織へ消炎作用のある薬も併用します。症状の改善がみられない場合は、非炎症性慢性骨盤内疼痛症候群と同様の対症療法を行います。
非炎症性慢性骨盤内疼痛症候群は、原因が多岐にわたります。前立腺の分泌物に細菌は白血球が認められないことより、細菌の関与は低いと思われますが、抗菌剤を2週間程投与することにより症状の改善がみられることもあります。慢性前立腺炎と同様に排膿作用も考えて前立腺マッサージを施行したり、セルニルトン錠などの前立腺組織へ消炎作用のある薬も併用します。排尿困難感を認めたり射精管内への尿の逆流が疑われる症例ではα1ブロッカーが有効な場合あります。エコーで前立腺周囲の静脈の拡張がみられたり痔疾の合併がみられ骨盤内のうっ血が関与していると考えられる場合には、桂枝茯苓丸が有効なことがあります。腰痛を伴っている場合には、牛車腎気丸が有効な場合もあります。前立腺の非特異的な炎症が原因と考えられたり間質性膀胱炎の合併が疑われる場合には、柴苓湯を投与することもあります。その他、竜胆瀉肝湯、猪苓湯合四物湯、八味地黄丸、五淋散、猪苓湯、清心蓮子飲なども試みられます。心身症の一症状と考えられる場合には抗不安薬の投与を行うこともあります。
日常生活の注意点としては、精神的なストレスや過度の疲労、長時間の座位や車の運転、自転車、過度の飲酒や刺激物の摂取、冷えなどの誘因になる可能性のあることは避けるようにしましょう。射精については、過度ではない週1回程度の射精なら排膿作用があり良いと考えられています。
大切なことは、前立腺炎は命にかかわる病気ではない、頻尿、不快感、軽度の疼痛により日常生活に少し支障をきたすだけの病気だと言うことです。なかなか症状がすっきりと改善しないことも多い病気であり、改善しても再発を繰り返すことが多い病気であるため、あまりにも神経質になり、症状が良くならないことに不安やいらだち、不信感を持つようになり、病院を転々として、やがて神経症やうつ病になり、精神科や心療内科に通院するようになるケースもあります。
慢性前立腺炎はなかなか症状がすっきりと良くならないことがあります。その場合には症状とうまく付き合っていくことも大切であることを理解しておく必要があります。

過活動膀胱という病気ご存じですか

過活動膀胱とは

膀胱が、本人の意思とは関係なく突然収縮するため、急に我慢することの困難な尿意(尿意切迫感)が起こる病気です。トイレが近くなり、ときには我慢できずに尿を漏らしてしまい、オムツが必要になることもあります。尿意をもよおしたら我慢ができないために、近くにトイレがないと不安で、バスや電車での旅行に行けなかったり、外出をすることが億劫となって生活上の支障をきたすこともあります。

病因としては

脳や脊髄に病気があって尿を溜める命令が障害されている場合、膀胱より下部の尿道に狭いところがあって膀胱が収縮しやすくなっている場合、加齢による場合がありますが、原因のわからない場合も多くみられます。

診断は

『1日の排尿回数が8回以上で、かつ、急に起こる我慢することのできない尿意(尿意切迫感)が週一回以上起こる』方に対して、診察、排尿記録、尿検査、尿細胞診、尿流動態検査、超音波検査、PSA採血などを適宜行って、同様の症状を来すことのある病気(膀胱癌、膀胱結石、間質性膀胱炎、前立腺癌、前立腺炎、その他の尿路性器の炎症、尿閉状態、多飲、心因性頻尿など)を除外することにより行います。

治療は

抗コリン薬(商品名:ベシケア、トビエース、ウリトス、ステーブラ,バップフォー、ポラキス、ネオキシテープ)もしくはβ3受容体アゴニスト(商品名:ベタニス、ベオーバ)という膀胱の収縮を抑制する薬を用います。抗コリの副作用としては、尿排出障害、口の渇き、便秘、閉塞隅角緑内障、残尿の多い人、胃腸の蠕動運動の悪い人、重症筋無力症の人には禁忌で、認知機能の低下のある人では認知機能が悪化する可能性があります。β3受容体アゴニストは抗コリン薬に比べ尿排出障害は少ないですが、動悸、頻脈、不整脈などの副作用があり、重い心臓病のある人には禁忌です。ベタニスは、妊婦、授乳中の人でも禁忌となります。副作用のために薬を服用できない方には、干渉低周波による電気刺激治療もおこなわれており、約半数の方で症状の改善がみられています。
行動療法としては、少しずつ排尿間隔を延ばして膀胱を大きくする膀胱訓練、骨盤底筋を意図的に収縮させ(尿を途中で止める要領)て膀胱が不随意に収縮するのを抑制する骨盤底筋訓練などがあります。

日常生活での注意点としては

過剰な水分やカフェイン摂取は控えましょう。医師が尿を我慢するように指示(膀胱訓練)した場合を除いては、早めにトイレに行くようにし、外出時にはトイレの場所を確認しておきましょう。便秘や肥満は膀胱を圧迫し症状を悪化させますので、便秘や太りすぎには注意しましょう。寒い場所は避け、体を冷やさないようにしましょう。

間質性膀胱炎という病気を知っていますか

間質性膀胱炎は、膀胱粘膜上皮の透過性が何らかの原因で亢進し、尿が膀胱壁内に進入し、膀胱の間質(粘膜と筋肉の間)で炎症を起こす病気です。
間質性膀胱炎の多い症状は、頻尿、尿意切迫感(急に尿意が起こり我慢できない感じ)で、ほとんどすべての患者さんでみられます。
次に多いのが痛みです。尿がたまったときの強い痛みが特徴的ですが、排尿時や排尿後、また、冷えたときに痛むこともあります。
痛む場所としては、膀胱が多く、次いで、尿道、膣、下腹部、腰、会陰部の順です。
痛みはある種の食べ物をとると強くなったりすることがあります。
病気が進行した例では、膀胱は萎縮して、小さく硬くなって尿を溜められなくなってしまいます。
中高年の女性に多くみられますが、男性でも慢性前立腺炎と診断されている患者さんの中に、間質性膀胱炎の方がおられます。
間質性膀胱炎は細菌によって起こるものではなく、尿自体はきれいで、抗菌薬は効きません。
間質性膀胱炎が疑われる場合、麻酔下に膀胱鏡検査を行い、膀胱粘膜の点状出血か、ハンナー潰瘍とよばれる膀胱粘膜の地割れのようなものを確認して診断します。
先ほど述べた慢性前立腺炎以外にも、膀胱癌でも間質性膀胱炎に似た症状をおこすので尿細胞診検査も行います。
過活動膀胱との鑑別も必要で、過活動膀胱の治療薬である抗コリン剤を服用しても症状が改善しない場合には間質性膀胱炎を疑います。
治療としては、まず診断をかねて行う膀胱水圧拡張術があります。
ただし、治療作用が長続きせず、再び水圧拡張が必要となることもあります。
薬としては、痛み止めや抗うつ薬、抗ヒスタミン剤、漢方薬などが使われています。
自分でできる方法として膀胱訓練があります。
トイレに行きたいと思ったらほんの少し我慢してみて排尿の間隔をのばしていく方法です。
日常生活で気を付けることとして、香辛料(わさび、唐辛子、こしょう)、酸っぱい物(柑橘類、トマト、梅干し)は控えましょう。
水分をしっかり摂ることが大切ですが、アルコール・カフェインは控えめにしましょう。
下半身は冷やさないようにしましょう。
またストレスをためないようにしましょう。

男性の方は50歳を過ぎたらPSA検査を受けておきましょう

前立腺がんは、我が国でも高齢化社会の到来、生活様式の西洋化などに伴って、近年増加傾向の著しいがんです。
初期には自覚症状の出ないことが大半です。
がんが進行して尿道に達するようになると、尿が出にくくなったり、尿に血が混じったりします。
骨に転移して腰や背中に痛みを感じたり、骨折を起こしたりして整形外科を受診して発見されることもあります。
まれに、尿毒症で初めて見つかることもあります。
しかし、これらの症状が出てからではがんの根治は困難になります。
このように早期には症状が出にくいため、一昔前までは、発見されたときにはすでに進行していて、根治が不可能と考えられていました。
50歳以上の男性の方は、かかりつけ医に相談して、1~2年に1度はPSA検査をしておかれる方がよいでしょう。
また、父親や兄弟が前立腺がんにかかられている方は、そうでない方に比べて前立腺がんになる確率が高く、また、若くして前立腺がんになる可能性の高いことが知られています。
これらの方は、50歳になる前から定期的に検査をしておかれる方がよいでしょう。
PSAの正常値は、4・0ng/ml以下です。もしPSA値が正常より高値であった場合には、次に前立腺の触診やMRIで前立腺の中に腫瘤がないか詳しく調べることになります。その結果やはり前立腺がんが疑わしい場合には、前立腺針生検術を行うことになります。
前立腺炎や前立腺肥大症でもPSA値が高く出ることがあります。
また、検査の直前に前立腺に刺激の加わること、例えば、射精、自転車に乗っての来院、前立腺の触診、膀胱内への管の挿入や内視鏡検査をおこなった場合にも、PSA値が高く出ることがあります。
採血の直前48時間以内はこれらのことは避けてください。

夜尿症について

5歳を過ぎても週に2~3回以上の頻度で、少なくとも3カ月以上連続して夜間睡眠中のおもらし(尿失禁)を認めるものを夜尿症と言います。
夜尿症の原因としては、膀胱に溜められる尿の量が少ないためにおもらしをしてしまう場合(膀胱型)、夜間入眠中の尿量を少なくする働きをする抗利尿ホルモンの分泌が悪く夜間の尿量が多くなりおもらしをしてしまう場合(多尿型)、または両方とも認められる場合があります。
夜尿症の診断としては、まず排尿日誌(排尿時間、排尿量、おもらしの有無、夜中に漏らした尿量を記載)にてどちらの型かを調べます。また、エコー検査にて膀胱壁の肥厚や水腎症の有無もチェックし、早朝尿の浸透圧も検査します。
大人では膀胱に尿がいっぱいたまると尿意を感じて目が開き夜中でも起きてトイレに行くため夜間睡眠中の尿失禁は起こりませんが、子供の場合には睡眠が深く大人のように夜中に尿意を感じて目が開くことは多くの場合期待できません。従って、夜尿症の治療は夜間尿量が膀胱容量よりも少なくなるようにコントロールします。夜間尿量が多いことが原因の場合(多尿型)は、夕方からの水分摂取を制限します。膀胱容量が小さい場合(膀胱型)には尿意を感じてから尿をしばらく我慢して膀胱を大きくする練習(膀胱訓練)を行い、改善しない場合にはや尿アラームを装着します。尿意切迫感が強くて尿を我慢できないために膀胱訓練ができない場合には、抗コリン薬を用いることがあります。多尿型で水分制限を行っても夜間尿量が多い場合には、就寝前に抗利尿ホルモンを補充することがあります。

詳細はこちらをご覧ください。(日本小児泌尿器科学会より)

目で見てわからない血尿(顕微鏡的血尿)について

血尿には、目で見て分かる肉眼的血尿と、目では気づかず顕微鏡や試験紙でしか分からない顕微鏡的血尿があります。
顕微鏡的血尿は、尿を遠心分離して作成した尿沈渣標本を顕微鏡の400倍視野で観察して、赤血球が5個以上確認される場合を言います。

健診では、試験紙法が用いられていますが、試験紙法はヘモグロビンのペルオキシダーゼ用作用を利用するため、検査前にビタミンCを摂取すると実際には尿に血が混ざっていても陰性に出てしまうことがあるので注意が必要です。女性の場合は月経血の混入にも注意が必要です。激しい運動の後も陽性に出ることがあります。

血尿は、糸球体性血尿と非糸球体性血尿に分類されます。糸球体性血尿は、腎臓の中で血液から尿を濾過する糸球体に異常が起こり尿に赤血球が混じる場合で、尿沈渣の赤血球は多彩な形態を示します。糸球体性血尿で治療が必要な病気として腎炎などがあります。非糸球体性血尿は、糸球体より下部の尿路に病気があり尿に赤血球が混じる場合で、赤血球は比較的均一な形態を示します。治療が必要な病気として腎臓・腎盂・尿管・膀胱・前立腺のがん、尿管結石、膀胱炎などがあります。しかし、顕微鏡的血尿では精密検査を行っても原因不明の場合が大半です。

検査は、まず尿沈渣を顕微鏡で観察して、赤血球の形態から糸球体性血尿か非糸球体性血尿かを診断します。しかし、両者を明確に診断することが困難なことも多く、腎炎等を疑った血液検査と尿路のがんや結石等を疑った腎膀胱超音波検査ならびに尿細胞診検査の両方の検査を同時に行うこともあります。40歳以上の男性、喫煙歴のある方、化学薬品の暴露歴のある方、肉眼的血尿の既往のある方、骨盤内放射線治療歴のある方、シクロホスファミドの治療歴のある方では、膀胱がんのリスクがあり、膀胱鏡検査を行うこともあります。

夜間頻尿に悩んでいませんか

以前は、夜中に何度もトイレに起きるようになると、前立腺肥大症かなと考えられていました。
しかし、男女間で夜中にトイレに起きる回数に差がないことがわかり、今では前立腺肥大症以外の原因が大部分を占めていると考えられています。
40歳以上の男女を対象に行った調査では、約半数の人が夜中にトイレに起き、男女ともおしっこに関する悩みの中で多い悩みとなっています。

悩みの主な原因は、夜中にトイレに起きることにより睡眠が妨げられることですが、夜中にトイレに行く際に転倒して骨折を起こすこともあります。夜中に3回以上トイレに行く人は、夜中に1回しか行かない人に比べ明らかに寿命が短いことがわかっています。

糖尿病などの喉が渇きやすい病気で水分を多く摂る人、脳梗塞・心筋梗塞の予防目的や精神的な原因で水分を多く摂る人、寝る前にコーヒーや茶、アルコールなどを飲む習慣のある人、高血圧、心不全、腎不全などにより体に水分が溜まりやすい人、痛み止めなどの体に水分が溜まりやすいお薬を服用している人、1日中立ち仕事をしたり座っているため重力で足に水分が溜まり夜寝てから足に溜まった水分が戻ってきて尿として出る人、睡眠時無呼吸症候群の人、睡眠が浅いために夜中に何度も目が覚めその都度尿意を感じてしまう人などがいます。
前立腺肥大症や過活動膀胱などの泌尿器科の病気で1回に出る尿の量が少なくなり、夜中に何度もトイレに行く人もいます。

治療として、まずは生活面の改善を行います。
規則正しい就寝・起床時間、規則正しい食事、30分程度の昼寝、昼間の活発な活動、日光浴、夕方の散歩、就寝前1時間以内のぬるま湯浴などにより、良好な睡眠が得られるようにします。
1日の尿量が、女性では1200~1500ml、男性では1500~1700ml程度になるように水分を摂取してください。
夕食時の塩分、寝る前のコーヒー、お茶やアルコールは控えましょう。
その代わりに朝起きた時にはしっかり水分を取るようにしましょう。
以上の生活面の改善を行っても夜中に何回もトイレに起きる場合には、泌尿器科的な精査が必要かもしれません。薬による治療としては、夜間一時的におしっこが作られるのを減らす薬や、寝るまでに体内に溜まった不要な水分を出してしまう薬、時には睡眠薬を服用していただくことがあります。

尿管結石について

結石は腎臓内でおとなしくしている間は痛みの原因になることはあまりありませんが、結石が尿管に下降してくると、激しい腰痛や側腹部痛を起こしてきます。
また、細菌感染のある結石では腎盂腎炎を合併し高熱が出て重篤な病気を起こします。
長期に尿管の通過を阻害すれば腎臓の機能は徐々に低下します。
尿管結石の診断は、エコーや腹部のレントゲン検査、造影剤を注射してレントゲンを撮影する排泄性尿路造影検査(IVP)により行います。
結石は大きさやその位置で治療方法が変わります。
6ミリ以下の結石は自然に排石されることが多く、鎮痛剤で症状をおさえ、排石促進剤を内服して結石が排石されるのを待ちます。
痛みが強い場合や頻回である場合、腎盂腎炎を合併する場合は治療を行います。
また、10ミリを超える結石では自然に排石する確率が低くなり、治療が必要です。
治療では体外式衝撃波結石破砕術(ESWL)、経尿道的尿管砕石術(TUL:内視鏡手術)、経皮的腎切石術(PNL)、尿管切石術(開腹手術)があります。
体外式衝撃波結石破砕術は侵襲が少なく、通常鎮痛剤のみで麻酔は行わず、通院での治療も可能です。
ただし、結石の位置、硬さや大きさで治療作用の差が大きく、不確実な治療でもあります。
腎臓近くの尿管結石の場合は、80%以上の成功率で最初にお勧めできる治療です。
骨盤の骨が邪魔をする中部尿管から下部尿管結石では、成功率は低下します。
ペースメーカーを装着している方や、妊娠中の方は、この治療法は選択できません。
このような場合には、内視鏡手術を勧めすることになります。
最近では、軟性尿管鏡という柔らかく自由に曲がる内視鏡が普及しており、腎臓内の結石に対しても内視鏡で治療が可能になっています。

精液に血が混じる病気(血精液症)について

血精液症は、精液に血液が混入して、精液がピンク色や赤色、暗赤色になる状態です。
精液は精巣で作られた精子を含む液が、精巣上体、精管を通り、精嚢腺液、前立腺分泌液が加わり、射精により前立腺部尿道、前部尿道を経て体外に出ます。
したがって、この通路のどこかに出血があると血精液症となりえます。
実際には、精嚢腺からの原因不明の出血(特発性精嚢腺出血)が多くみられますが、前立腺や精嚢腺の炎症、稀には、前立腺癌や精嚢癌(稀ですが)でも血精液症となります。ミュラー管嚢胞や射精管拡張症のみられることもあります。前立腺生検術後にも血精液症のみられることがあります。射精時痛を伴う場合には、前立腺炎や精嚢腺炎が疑われます。
検査としては、まず、精巣、精巣上体、体表から触診できる部位の精管を触診し、前立腺、精嚢腺を直腸診にて調べ、炎症やできものが無いか調べます。尿路に出血の原因となる異常があっても精液に血が混じることがあるため、検尿も行います。40歳以上の方では前立腺癌を否定するためにPSAの採血も同時に行います。次に、精液を採取して、炎症がないか、菌が入っていないか、また、念の為に精液の細胞診も行います。また、経直腸的エコー検査にて前立腺、精嚢腺に出血をきたすような異常が無いかを調べます。以上で診断がつかない場合は前立腺~精嚢腺のMRI検査を行い出血の原因を調べます。
前立腺や精嚢腺の炎症の場合は、クラビットなどの前立腺・精嚢腺へとどきやすい抗菌剤を用います。前立腺癌等のできものが原因の場合はそれぞれに準じた検査治療を行います。原因不明の精嚢腺出血の場合は止血剤を投与して様子をみることもありますが、大半は心配ないことを説明して、経過観察を行います。

前立腺がん

前立腺がんは高齢化社会、食生活の欧米化、PSA検査の普及により増加しています。
以前は排尿困難、腰痛などで見つかることが多く見られましたが、最近ではPSA検診や他疾患の採血時に同時に行ったPSA検査で偶然見つかることの方が多くなっています。
PSA検査および直腸診から前立腺がんを疑い、前立腺MRIにより更に精査し、前立腺生検を行って診断します。
治療としては、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RALP)、小線源治療、放射線外照射(IMRT、陽子線治療、重粒子線治療)、ホルモン治療、化学療法などがあります。ごく早期で悪性度の低いがんでは、無駄な治療を避けるため、何も治療せず注意深くPSAの動きをみる方法(PSA監視療法)も行われています。具体的な治療法については病期や生命予後により多岐にわたるため、ここで記載することは困難で、下記のNCCNの前立腺がんガイドラインを参照してください。
https://www2.tri-kobe.org/nccn/guideline/urological/japanese/prostate.pdf)

進行したがんや従来のホルモン治療が効かなくなったがん(去勢抵抗性前立腺がん)に対して、最近ではエンザルタミド(イクスタンジン)、アビラテロン(ザイティガ)、カバジタキセル(ジェブタナ)、ゾフィーゴなどの新薬も登場しています。

急性膀胱炎

尿道から尿の流れと逆に細菌が膀胱中に入ることにより起こり、排尿時または排尿後の痛みや不快感、頻尿、残尿感、尿の混濁などが見られます。目で見える血尿が出ることもあります。熱発は見られません。
女性は外尿道口から膀胱までの尿道が3~4cmと短く、細菌が膀胱内に容易に到達するために、主に女性が罹患します。検尿を行うと尿沈渣に白血球や細菌が認められます。起炎菌は大腸菌のことが多いため、大腸菌に感受性のあるセフェム系の抗生剤やニューキノロン系の抗生剤を5日程度服用します。まれに、ESBLなどの抗生剤の効きにくき菌が入って膀胱炎を起こすことがあり、尿の細菌検査を施行しておきます。治療中は水分を多くとり、体を冷やさないようにして、アルコールや香辛料などの刺激物は避けましょう。
誘因としては、過度に排尿を我慢したり、過労や睡眠不足や他の病気で抵抗力が低下している場合、水分の摂取不足、また、性行為により機械的に菌が入ったり、ウォッシュレット洗浄液の水圧で菌が膀胱に入ることにより起こることもあります。
再発予防のためには、尿を過度に我慢しないようにして、水分を多めに摂り、外陰部を清潔に保ち、トイレットペーパーは前から後ろへ拭くように心がけ、体を冷やさないようにして、過労や睡眠不足は避け、性交渉の後は排尿して膀胱内の尿を出しておくようにしましょう。